東京地方裁判所 昭和61年(ワ)12091号 判決 1991年5月21日
原告
日下正一
被告
財団法人土木建築厚生会
右代表者理事長
熊崎正夫
右訴訟代理人弁護士
横大路俊一
主文
原告の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一請求
(主位的請求)
一 原告が被告に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
二 被告は原告に対し、金八四八万七八五八円及び内金四五七万六四二九円に対する昭和五六年一一月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告は原告に対し、二〇〇万円及びこれに対する昭和六一年一〇月三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は被告の負担とする。
五 第二、三項につき仮執行の宣言
(予備的請求……主位的請求一に代えて)
一 被告は原告に対し、金一二〇万円及びこれに対する昭和六二年八月二五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は原告に対し、同一〇〇万八六六一円及びこれに対する平成三年三月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
第二当事者双方の主張
一 原告の主張
1 雇用契約の成立
被告は、全国土木建築国民健康保険組合の福利厚生部門で、事業の一環として右組合員及びその家族にサービスするため二四時間営業の「ホテル白鳥」を経営しているものであるが、原告は、昭和五六年三月一一日から期限の定めなく、次の条件で被告に雇用された。
(一) 基本給
昭和五六年三月から九月まで一六万円
同年一〇月から一六万三〇〇〇円
(二) 食事手当
夕、朝食及び日直勤務当日の昼食を現金支給
(三) 当直兼務手当
宿直又は日直一回につき三〇〇〇円
(四) 勤務時間
週日は九時から一七時まで
土曜日は九時から一二時まで
(五) 賃金支払期日
毎月末日
2 基本給の差額、割増賃金及び附加金
(一) 原告の基本給は、前記のとおりであるから、昭和五六年三月から一〇月までの合計で一二八万三〇〇〇円であるところ、被告は、このうち昭和五六年三月に五万五〇〇〇円、同年四月から九月まで各八万円、同年一〇月に八万三〇〇〇円を支払ったのみである。したがって、六六万五〇〇〇円が未払となっている。
(二) 原告は、昭和五六年三月から一〇月までに別表1(略)のとおり所定外労働をした。これに対する割増賃金の計算の基礎となる超勤手当算定基礎額は別表2(略)のとおりであり、割増賃金の時給は別表3(略)のとおりであるから、割増賃金額は別表4(略)のとおり合計三九一万一四二九円となる。
(三) 被告は前項の割増賃金の支払をしないから、原告はこれと同一額の附加金の請求権を有する。
3 不法行為
原告は、被告の次に記載する不法行為により、著しい精神的苦痛を被った。その慰藉料は二〇〇万円を超える額が相当である。
(一) 被告は、原告に対し、労働基準法に定める休憩時間を与えず、深夜を主体とする連続長時間勤務を課し、睡眠覚醒のリズムを転換させて消化器疾患、神経疾患等を発病させた。
(二) 被告は、原告に対する健康診断を怠り、中高年者を使い捨ての消耗品扱いし、即時解雇をもって脅迫して原告に右(一)の労働を課した。
(三) 被告は、原告に対し、採用面接において基本給を公開求人カードで公約した一二万五〇〇〇円を上回る一六万円と約定したにもかかわらず、毎月の賃金支払に際してこれを八万円に減額し、生活保護法に基づく最低生活にも達しない限界生活を余儀なくさせた。
(四) 被告は、原告に対して、時間外、深夜、休日労働をさせながら、その割増賃金を支払わず、これを騙取した。
(五) 被告は、原告との雇用契約成立後原告についての厚生年金保険法に基づく原告の被保険者届を昭和五八年四月まで怠っていたため、原告は、昭和五九年六月から昭和六一年一二月まで唯一の収入である通算老齢年金の半額の返還処分を受けた。
(六) 被告は、厚生年金保険法の被保険者届につき、後記のとおり違法に低額の標準報酬月額の届出をしたため、原告は、審査請求及び再審査請求を余儀なくされた。
(七) 被告は、昭和五六年一〇月三一日就業規則に規定する解雇事由がないのに、原告を即時解雇した。そのため、原告は、東京地方裁判所に未払賃金等請求事件(東京地方裁判所昭和五六年(ワ)第一三二〇一号事件)及び解雇無効確認等請求事件(同庁同年(ワ)第一四二一三号事件)の提起を余儀なくされた。
(八) 被告は、後記のとおり、雇用保険法に基づく被保険者離職票に違法に低額の平均賃金を記載し、厚生年金保険法に基づく被保険者届に低額の標準報酬月額を記載して、原告に損害を与えた。
4 予備的請求について
原告と被告との雇用契約が終了したとすれば、原告は、次のとおりの被告の不法行為により損害を被った。
(一) 失業給付基本手当の減額による損害
被告は、昭和五八年一〇月二七日飯田橋公共職業安定所に雇用保険法に基づく原告の被保険者離職票を提出したが、その際、原告の離職の日前六箇月の賃金を別表5(略)のとおりに記載すべきところ、故意又は過失により毎月一二万八〇〇〇円と記載した。そのため、原告の失業給付基本手当の一日当たりの額が六六七〇円であるべきところ、二六七〇円とされ、原告は、右の差額一日四〇〇〇円、三〇〇日分の合計一二〇万円の失業給付基本手当の支給を受けることができず、右同額の損害を被った。
(二) 厚生年金の減額による損害
被告は、昭和五八年四月七日及び一〇月二四日東京都知事に対し、厚生年金保険法に基づく原告の被保険者届を提出したが、その際、報酬月額を別表6(略)のとおり七三万六七八五円とし、標準報酬月額をこれに対応する五七万円とすべきであったところ、故意又は過失により昭和五六年三月から九月までは報酬月額を一三万二一三〇円、標準報酬月額を一三万四〇〇〇円、同年一〇月から昭和五七年一月までは報酬月額を一三万八二一〇円、標準報酬月額を一四万二〇〇〇円、同年二月から一〇月までは報酬月額を一二万八〇〇〇円、標準報酬月額を一二万六〇〇〇円と記載した。そのため、原告は、通算老齢年金中報酬比例部分につき、昭和五七年一一月分以降本来支給を受けられる額より減額されたものしか支給されないことになり、財産的損害を被るに至った。
右報酬比例部分の減額による損害は、次のとおり算出される。すなわち、被告が原告主張のとおり標準報酬月額を五七万円として届け出れば原告の平均標準報酬月額は二九万二五〇九円となるところ、右のとおり誤った届出をしたため、それが二二万〇五三八円となった。そのため、昭和五六年三月から平成三年二月までの一〇年間において、本来報酬比例部分は四〇九万九五四三円となるべきところ、三〇九万〇八六二円とされ、その差額一〇〇万八六八一円の損害を被った。
5 結論
よって、原告は、被告に対して、次のとおり請求する。
主位的に、
(一) 雇用契約上の地位確認
(二) 前記二の基本給の差額、割増賃金及び附加金の合計額八四八万七八五八円とそのうち附加金を除く四五七万六四二九円に対する弁済期以後である昭和五六年一一月一日から完済まで年五分の割合による遅延損害金、並びに不法行為による慰藉料二〇〇万円とこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和六一年一〇月三日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払 を求める。
さらに、予備的に、右(一)の雇用契約上の地位確認請求が認められない場合には、前記4記載の失業給付手当の減額による損害一二〇万円とこれに対する請求の翌日である昭和六二年八月二五日から完済まで年五分の割合による遅延損害金及び厚生年金の減額による損害一〇〇万八六八一円とこれに対する平成三年三月一日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 被告の主張
1 原告の主張1は、基本給及び勤務時間については否認し、その余は認める。
基本給は、月額八万円(昭和五六年一〇月以降は八万三〇〇〇円)であった。
原告は、ホテル部門において夜間専門の隔日勤務をするフロント係として雇用されたもので、その勤務時間は、平日が午後五時から翌朝九時まで、土曜日が午後〇時から翌朝九時まで、休日が午前九時から翌朝九時までで、いずれの勤務においても午前〇時から六時までは睡眠時間として勤務から除かれ、その他に休憩時間が一時間あった。
なお、当直手当は、平日及び土曜日の場合は三〇〇〇円、日曜日及び祝祭日の場合は六〇〇〇円を支給することになっていた。
2 同2の(一)は、原告主張のとおりの支払をしたことは認めるが、その余は争う。
同2の(二)は、原告の労働が所定外労働であったことは争う。
3 同3の(一)ないし(八)は、いずれも争う。
4 同4の(一)については、離職票に原告主張のとおり記載して届出をしたことは認めるが、その余は争う。
同4の(二)については、被保険者資格取得確認等の届に原告主張のとおり記載して提出したことは認めるが、その余は争う。
5 訴訟上の和解の成立
原告と被告との間には、原告の主張3の(七)記載の訴訟事件において、昭和五八年一〇月一四日次のとおりの条項を内容とする訴訟上の和解が成立したから、これと抵触する原告の請求は許されない。
なお、原告は、右和解に対して和解無効確認請求訴訟を提起して敗訴判決を受け、その判決が確定している。
(一) 被告は原告に対し、被告が昭和五六年一〇月三一日原告に対してなした解雇の意思表示を撤回する。
(二) 被告と原告は、原被告間の労働契約を昭和五七年一〇月三一日限り合意解約する。
(三) 被告は原告に対し、昭和五六年三月一一日から同五七年一〇月三一日まで、原告が厚生年金保険法の被保険者であることを認める。
(四) 被告は原告に対し、昭和五六年一一月から同五七年一〇月までの賃金七〇万四五四〇円(月額金一二万八〇〇〇円の一二か月分金一五三万六〇〇〇円から、(1)厚生年金保険料の本人負担分(昭和五六年三月から同五七年一〇月までの分)金一三万九九二〇円、(2)所得税(昭和五六年一一月から同五七年一〇月分までの分)金五万一五四〇円、(3)既払い賃金六四万円、合計金八三万一四六〇円を控除したもの)及び和解金二九万五六四九円合計金一〇〇万円の支払義務のあることを認め、これを昭和五八年一〇月三一日限り、原告名義の普通預金口座に振り込んで支払う。
(五) 原告はその余の請求を放棄する。
(六) 原告と被告とは、本和解条項に定めるほか、他に何らの債権・債務のないことを相互に確認する。
(七) 訴訟費用は各自の負担とする。
三 被告の主張に対する原告の反論
被告の主張する訴訟上の和解は、次に述べるとおり前提事実に重大かつ明白な瑕疵があり、当然に無効である。
1 被告は、ことさら原告に隔日単独昼夜逆転無休憩長時間勤務を命令し、休日給、休日残業手当、残業手当、深夜手当を支払わないで、八箇月間に三九一万一四二九円を騙取するという暴利行為を行った。
2 被告は、労働基準法、最低賃金法、厚生年金保険法、所得税法の脱法を企図し、割増賃金及び基本給につき詐欺利得を常習的に反復実行した。
3 和解条項の(四)については、原告は関知しない。
4 被告は、和解期日終了後、和解条項(四)に記載の必要のない所得税及び保険料につき作成された虚偽の内容の計算書を密かに裁判所書記官に提出し、右書記官をして不実の和解調書を作成させた。
理由
一 原告と被告との間の雇用契約の成立に関し、次の事実が認められる。
1 被告は、全国土木建築国民健康保険組合の福利厚生部門で、事業の一環として組合員等に対するサービスとして「ホテル白鳥」を経営していたが、昭和五六年三月、飯田橋公共職業安定所(以下「安定所」という。)に求人票を提出して右ホテルのフロント係を募集していた。
2 原告は、同月九日、安定所から紹介を受けて右求人に応募するため被告に赴き、被告の三枝総務課長と面接した。そして、話合いの結果、原告と被告との間に次のとおりの雇用契約が成立した。
(一) 被告は、原告を「ホテル白鳥」のフロント係として昭和五六年三月一一日から雇用する。
(二) 勤務時間は、平日が午後五時から翌朝九時まで、土曜日が午後〇時から翌朝九時まで、休日が午前九時から翌朝九時までとする。ただし、いずれの勤務においても、午前〇時から六時までは睡眠時間とし、午後一〇時までに休憩を一時間取ることができる。
(三) 給与は、基本給を一箇月八万円(その後昭和五六年一〇月から三〇〇〇円増額された。)とし、その他に当直手当として一回につき三〇〇〇円、ただし日曜日及び祝祭日は二回分の六〇〇〇円を支給し、食事手当、通勤手当を実費支給する。給与の支払日は、毎月末日とする。
(<証拠略>)
なお、原告は、本件訴訟の最終段階において基本給が一六万円であった旨主張するに至ったが、この主張に副う証拠は見当らない。また、右のように主張する以前においては、基本給が一二万五〇〇〇円であったと主張し、原告本人尋問においてもその旨供述する。確かに、安定所に対する求人票には、基本給の欄に右金額の記載があるが、この記載は基本給が七万五〇〇〇円であったのを昭和五六年四月から八万円に増額することとなり、求人票の記載をこれに応じて訂正する際に、当直手当四万五〇〇〇円(一箇月一五回分)の記載を抹消して基本給欄にまとめて記入したにすぎず、原告に対しては前記面接の際に三枝からその点十分説明したうえ、前記雇用契約が締結されたものである(<証拠略>)。したがって、原告本人の右供述部分は、採用できない。
二 さらに、右雇用契約の終了に関し、次の事実が認められる。
1 原告が給与額等に関して当初の合意にない要求をするなどしたため、被告は、原告との雇用契約を継続することは困難であると考え、昭和五六年一〇月二〇日ころ、原告に対して同月末日をもって解雇する旨の意思表示をした。
2 右解雇に対して原告は、解雇無効確認請求訴訟(東京地方裁判所昭和五六年(ワ)第一四二一三号事件)を提起したところ、右事件及びこれより先に原告が被告に対して提起していた未払賃金等請求事件(同庁同年(ワ)第一三二〇一号事件)の両事件につき、昭和五八年一〇月一四日、原告と被告との間に被告主張のとおりの条項を内容とする訴訟上の和解が成立した。
3 右和解成立後、原告は和解無効確認請求訴訟を提起したが、請求棄却の判決を受け、右判決は確定した。その後さらに、原告から右判決に対して再審請求が提起されたが、その却下判決がされている。
(<証拠略>)
三 右認定事実に基づいて、原告の主位的請求につき判断する。
1 雇用契約上の地位確認請求については、原、被告間の雇用契約は訴訟上の和解により既に終了しているから、理由がないことが明らかである。原告は、右和解が当然に無効であると主張するが、前認定のとおり無効確認請求訴訟が棄却され、その判決が確定している以上、右主張は採用の限りでない。
2 次に、給与及び附加金の請求について考える。雇用契約における勤務時間、基本給等に関する合意は前記のとおりであるから、基本給の未払はなく、また、割増賃金についても、原告の主張はその前提を欠き、失当である(なお、弁論の全趣旨によれば、本件雇用契約の下において原告のした勤務につき支払われた当直手当は、深夜、休日労働に対して支払うべき割増賃金の最低額を超えていると認められる。)。そればかりでなく、右の請求は、前記和解条項(六)に抵触するから、この点からも理由がないことが明らかである。
3 さらに、不法行為に基づく慰謝料の請求につき判断する。
原告の主張する事由のうち、(一)、(二)、(五)及び(七)はこれを認めるに足りる的確な証拠がなく、(三)及び(四)は前述のとおり事実に反するものと認められ、結局原告主張の事実は認められない。加えて、これらの事由は前記訴訟上の和解が成立する前の出来事を取り上げるものであるから、これらを理由として損害賠償を請求するのは前記和解条項(六)に反し許されない。したがって、右の事由を根拠とする請求は、いずれにしても理由がない。
次に、(六)及び(八)の事由は、後記のとおりいずれの届出も記載を誤ったものということはできないから、これに基づく請求も理由がない。
したがって、慰謝料の請求も失当である。
四 次に、予備的請求について判断する。
1 まず、雇用保険法に基づく被保険者離職票の記載についてみるに、前述のとおりの和解が成立した以上、原告は昭和五七年一〇月三一日限り離職したが、その賃金は昭和五六年一一月から一箇月一二万八〇〇〇円であったことになる。そうすると、右離職票に被告が離職の日以前一年間の賃金を毎月一二万八〇〇〇円と記載した(<証拠略>)のは正当であって、なんら不法行為を構成するものではない。
2 次に、厚生年金保険法に基づく届出について検討する。
被告は、昭五八年四月七日、厚生年金保険法二七条に基づく被保険者の資格及び報酬月額に関する届出として、原告につき「被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書」及び「被保険者標準報酬決定通知書」の用紙に必要事項を記入して社会保険事務所長に提出したが、前者には昭和五六年三月から九月まで適用されるものとして、報酬月額を同年四月の賃金支払額である一三万二一三〇円、標準報酬月額を右報酬月額に対応する一三万四〇〇〇円と記載し、後者には同年一〇月に適用されるものとして(当時被告は、雇用契約は同月限り終了したと主張していた。)、報酬月額を同年五月から七月までの賃金支払額の平均である一三万八二一〇円、標準報酬月額を右報酬月額に対応する一三万四〇〇〇円と記載した(<証拠略>)。さらに、前記和解が成立した後である同年一〇月二四日、報酬月額の変更に関する届出として、「被保険者標準報酬改定通知書」の用紙に変更後の報酬月額を前記和解で合意された一二万八〇〇〇円(昭和五六年一一月から同五七年一月までの平均)、標準報酬月額を右報酬月額に対応する一二万六〇〇〇円と記載し、これが昭和五七年二月から一〇月まで適用されるものとして同事務所長に提出した(<証拠略>)。
原告は、これらの届出に当たっては、報酬月額を七三万六七八五円、標準報酬月額を右報酬月額に対応する五七万円とすべきであった旨主張するが、原、被告間の雇用契約における給与に関する合意が前記のとおりであり、かつ、前記のとおりの和解が成立した以上、原告主張の右金額を届け出るべきであったとすることができないのは明らかである。そして、厚生年金保険法二一条ないし二三条に照らせば、原告が右に認定したとおり報酬月額の届出をしたことになんら違法、不当な点はなく、同法二〇条によれば、これに対応する標準報酬月額の記載にも誤りはなかったということができる(<証拠略>)。もっとも、標準報酬月額自体は都道府県知事が決定する事項で、届出事項ではなく、届出に当たりこれを記載するのは事務処理の便宜上の措置というべきであるから、仮に被告がその記載を誤ったとしても、そのことから被告に損害賠償等の責任が生じるものではない。)。
そうすると、原告の厚生年金保険法に基づく届出に関する主張は理由がないことになる。
五 以上によれば、原告の請求は、主位的請求、予備的請求のいずれも理由がなく、棄却すべきである。
(裁判官 相良朋紀)